基礎用語1

発明

 発明とは特許法上「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」を言います。具体的に何が発明に該当し、何が発明に該当しないかは「発明(考案)かどうかの判断基準」を参照して下さい。なお、実用新案の対象は発明ではなく"考案"ですが、実用新案法上は考案は発明の定義から「のうち高度なもの」を省いたものになっています。しかし、実務的にはこの違いを考慮する必要はありません。ですから考案も発明も同じに考えて差支えありません。発明のうち特許を受けているものを「特許発明」と言います。

 発明は「物の発明」と「方法の発明」とに分けることができます。この「物の発明」と「方法の発明」とに分けたそれぞれを発明のカテゴリーと言うことがあります。「物の発明」と「方法の発明」の違いは「物の発明」は時間の要素を必須としないものであり、「方法の発明」は時間の要素を必須とするという違いで区別します。「方法の発明」はさらに「単純方法の発明」と「製造方法の発明」とに分けることができます。「物の発明」と「単純方法の発明」と「製造方法の発明」それぞれは実施とされる行為の内容が異なる、即ち特許権の効力が異なるので(→「実施」参照)、特許出願書類で権利を求める発明を記載する「特許請求の範囲」に記載する発明はどのカテゴリーに入るのかを明確にしておかなければなりません。なお、語尾が「~方式」「~システム」で終わるものは物の発明と解釈されます。

 また、実用新案法では保護対象が「物品の形状、構造又は組み合わせに係る考案」に限定されていますので、実用新案制度を利用する場合には考案のカテゴリーは「物の考案」だけになります。


特許を受ける権利

 ”特許を受ける権利”とは、文字通り、特許を受けることができる権利で、発明者が発明をすることによって取得します。特許を受ける権利を有していないと特許出願をすることはできません。つまり、特許を受ける権利を持っている人が最終的に特許権を取得することができます。特許を受ける権利は譲渡等により移転することができ、一部のみの移転も可能です。

 共同で発明した場合は特許を受ける権利は発明者全員の共有になります。また、最初一人だけが持っていた特許を受ける権利の一部を他人に移転することによって特許を受ける権利が共有になることもあります。逆に、共有していた特許を受ける権利を一人に移転することで共有でなくなることもあります。特許を受ける権利が共有されている場合は共有者全員で特許出願しなければなりません。

 実用新案制度においては、「実用新案登録を受ける権利」となりますが特許を受ける権利と同じように扱われます。


特許出願

 特許庁に対して特許を受けるために最初に行う手続で、願書に特許請求の範囲、明細書、図面、要約書を添付して特許庁に提出することにより行います。特許出願が受理されると出願番号が与えられます。

 実用新案登録出願も同様ですが、実用新案登録出願では図面は必須の添付書面です。特許出願の場合は図面は必要がないときは提出する必要がありません。

 同じ発明品を別々の人が考えついた場合は、それぞれの人が特許を受ける権利を持つことになります。この場合は、先に特許出願をした人のみが特許を受けることができます(先願主義)。どちらが先に発明したかどうかは考慮されません。つまり、特許を受ける権利は特許出願してはじめて自分のものとして確定すると考えるといいでしょう。


手続の補正

 特許庁に対して行った手続は原則として事件が特許庁に係属している限り補正をすることができます。これを手続の補正といいます。特許請求の範囲、明細書、図面、要約書については補正に関して一定の制限があります。手続の補正は手続補正書を提出することにより行います。

・特許請求の範囲・明細書・図面の補正

(補正の時期)原則として特許査定送られるまでの間であれば補正をすることができます。特許庁の審査で拒絶理由通知が出された後は、指定された期間内に限られることになります。

(補正の範囲) 最初の特許請求の範囲、明細書・図面に記載した範囲内で行わなければいけません。つまり、補正で新しい内容を追加することはできず、追加すると拒絶されることになります。ですから、最初の出願内容は発明の内容や発明の応用可能性などを十分に記載しておく必要があります。さもないと、拒絶理由通知に対応できなくなります。

 また、拒絶理由通知後に補正をすることで新たに発生した拒絶理由通知に対する補正や、拒絶査定審判請求時の補正はさらに制限が加わります。

・願書等の補正

 願書等の補正は特許庁に係属している限り行うことができますが、方式審査により不備があると判断された場合は補正命令を受けることがあり、この場合は指定された期間内に補正をしなければなりません。なお、方式審査で不適法な手続で補正ができないと判断された場合は手続が却下されます。

・実用新案の場合

 実用新案制度では出願から2ヶ月までしか実用新案登録請求の範囲・明細書・図面・要約書の補正はできません。また、基礎的要件審査で不備があると判断された場合、補正命令が発せられることがあり、この場合は指定期間内に補正しないといけません


新規性喪失の例外

 特許を受ける条件として、発明が特許出願前に世の中に知られていないこと(新規性)が要求されます。しかし、発明保護の観点から新規性を失っていても、特許にした方が良い場合があります。次の場合には、一定の手続きを行えば新規性を失っていないものと見なされます。

・新規性喪失の例外の適用を受けることができる場合。

(1)特許を受ける権利を有する者の意に反して発明の新規性が失われた場合

 例えば、秘密保持契約を交わして他人に発明を見せたにもかかわらず、その他人が発明を公表してしまったような場合や、会社に置いてあった発明関係の資料が盗まれて、その後、発明が公表されてしまったような場合が該当します。

(2)特許を受ける権利を有する者の行為によって発明の新規性が失われた場合

 例えば、発明者が発明を学会で発表した場合や、ネットや新聞にCMとして発明品を発表した場合などが該当します。

・新規性喪失の例外の適用を受けるための手続

(1)新規性を失った日から1年以内に特許出願を行うこと

(2)特許出願時に願書に新規性喪失の例外の適用を受けようとする出願であることを記載すること

(3)特許出願の日から30日以内に新規性喪失の例外の適用を受けることができる発明であることを証明する書類を提出すること

※ 特許を受ける権利を有する者の意に反して新規性が失われた場合、出願時には知らないことが普通なので(2)(3)の手続きは不要です。この場合は指摘されたときに証明すれば足ります。


国内優先権制度

 既に特許出願又は実用新案登録出願(先の出願)をしている場合に、先の出願の特許請求の範囲・明細書・図面に記載されている発明を含む新たな特許出願(後の出願)を優先権を主張して行うことができます。優先権を主張すると、後の出願の特許請求の範囲に記載されている発明のうち、先の出願に記載されている発明に関しては新規性等の判断の基準日が先の出願日になるという利益を受けることができます。

 先の出願は複数あってもかまいませんし、後の出願が実用新案登録出願でも優先権を主張することができます。先の出願は優先権の主張が取り下げられた場合等を除いて先の出願の日から1年3月経過したときに取り下げたものと見なされます。

 国内優先権は実施の形態を追加して出願内容を充実させるような場合や、複数の出願から上位概念が見つかったときにこれらをまとめて上位概念の発明についての出願にする場合、複数の出願が一つの特許出願にまとめることが可能な場合(出願の単一性の要件を満たす場合)にこれらを一出願にまとめる場合等に利用できます。さらに、補正では新たな内容を追加することはできませんが、優先権を使うことで特許出願に新たな内容を追加することができます。

・国内優先権主張の要件

(1) 後の出願が先の出願の出願日から1年以内にされること。

(2) 先の出願が分割・変更出願でないこと。

(3) 先の出願が放棄、取り下げ、却下、拒絶査定確定、特許査定確定、実用新案登録のいずれもなされていないこと。

(4)後の出願人が先の出願人が同じであること

(5)後の出願の願書に優先権主張に関する所定に記載をすること



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