Q1.

 面白い商品のアイデアを考えつきました。特許権を取りたいのですが何から手をつけたらいいのか全然わかりません。どうしたらいいでしょうか?

A.

まず、そのアイデアで特許権を取ることができるかどうかを調べることから始めましょう。はじめに特許の対象となるかどうかを発明・産業上利用性の判断基準を見て判断してください。特許の対象になるなら次に同じような発明が出願されていないかどうかを調べます。特許調査のやり方を参照してください。

同じような発明が出願されていなければ特許出願をします。自分で特許出願するか、特許事務所に依頼するかを決めます。「自分で特許出願するか?特許事務所に依頼するか?」を参照してください。特許事務所に依頼する場合、これ以降の手続きはすべて特許事務所が行ってくれます。特許事務所の選び方や依頼時の留意点は「特許事務所に依頼するときの留意点」を参照してください。

自分で特許出願する場合は、出願書類を作成して特許庁へ提出します。郵送でも大丈夫です。自分で特許出願をする場合は、「自分で特許出願をするには」を参照してください。

なお、特許出願には費用と労力がかかります。本当に特許権を取る価値があるかどうかも出願前に考えてみてください。

Q2.

 ほんとうに簡単な思いつきなのですが、特許権を取ることができますか?

A.

特許発明は複雑なものや、最先端技術でないといけないと考えている人も多いようですがそうではありません。ポイントは「新しいものであること」「容易に考えつくものではないこと」です。つまり、簡単な思いつきでも、新しくて容易に考えつかないものならば特許権を取ることができます。実際に簡単な思いつきレベルの発明もたくさん特許になっています。

逆にいうと特許は発明の技術的なすばらしさを保証するものではないわけです。

Q3.

 アイデアがあるのですが、特許権をとるのがいいのか実用新案権をとるのがいいのか判断に困っています。どうすればいいでしょうか?

A.

まず、特許制度と実用新案制度の違いを知ることが必要ですね。「少し詳しい知識」の「特許制度と実用新案制度の違い」を参照してください。

個人の方で企業にライセンス交渉をしようとするのであれば特許の方がいいです。企業の方で自ら実施する場合は、流行性があってすぐに売り出して10年以内に商品価値が激減するようなものであれば実用新案にした方がよいでしょう。一方、長期の需要が見込める商品は特許にするべきです。どちらか判断がつかない場合はとりあえず特許出願をしておくのが無難でしょう。

Q4.

 特許権を取るには試作品が必要ですか?

A.

具体的なモノが無いと特許権が取れないと思っている人も多いようです。しかし、発明とは技術的思想の創作つまり考え方ですから、アイデアが頭の中にある段階で発明は完成しているといえます。従って、試作品等の実物が無くても特許権を取ることができます。

但し、特許出願の際には発明を実施できるように、つまり作ったり使用したりできるように発明を説明しなければなりませんから、発明が頭の中である程度具体的になっていないといけません。

Q5.

 今まで下請けで製造業をしていましたが、この度、初めて自社製品を販売することになりました。自社製品を販売するにあたって特許出願はをした方がいいでしょうか?

A.

多くの新商品は特許無しでもうまくいっていますから特許権を取ることは必須ではないということが言えます。一方で、製品に特許性があって、他社に真似される可能性が高いならば特許出願をするのはベターな選択でしょう。

予算があまりないのならば、特許出願だけして3年間は売れ行きを見てみるということもできます。特許出願をしておけば、他社はいつ特許になるかがわからないので、高い確率で真似をしてこないでしょう。特許出願は審査請求をしなければ特許庁で審査されることはなく、3年以内に審査請求をしなければ取り下げたものとみなされます。ですから、売れ行きなどから3年経過する前に特許庁に対して審査請求をするかどうかを決めることになります。もちろん、予算が十分にあって特許性に自信があるならば、早期に審査請求をしてもいいことは言うまでもありません。

Q6.

 発明を特許にするためには、どれくらいの予算を見積もればよいでしょうか?

A.

特許事務所に依頼する場合、特許取得までの費用としてざっくりと60万~80万円くらいを見ておきましょう。費用は発明の内容と特許庁が行う審査過程でかなり変わってきます。発明の内容が複雑で書類枚数が多くなると費用は当然増えますし、審査過程で拒絶理由通知が複数回来たり、拒絶査定に対して審判を請求するような場合も費用はより高額になります。逆に、簡単な内容で審査でも拒絶理由通知が来なかったような場合は想定より安価に収まる場合もあります。

また、費用は一度に発生するのではなく、数年の間に発生する点にも留意しましょう。費用が発生するのは、特許出願時、審査請求時、拒絶理由通知に対する応答時、特許査定時です。場合によっては先行技術調査の費用や審判請求の費用が発生することもあります。審査請求は最長3年まで保留できますし、審査請求してから審査結果が出るまで数カ月から1年くらいはかかります。ですから、特許出願から特許成立までは早ければ1年以内に収まる場合もありますが、5年くらいかかる場合もあります。したがって、予算は一定期間で分散することを念頭に立てることが必要になります。

特許事務所を使わずに、自分で特許出願をする場合は20万円弱くらいの費用を見ておきましょう。この場合は審査で何回拒絶理由通知が来ても追加の費用は発生しません(ただし審判まで行くと費用が発生します)。

なお、特許権の成立後も特許権を維持するために特許料が必要になることにも留意しましょう。

Q7.

 特許権を取りたいと考えていますが、とにかくお金がありません。どうしたらいいですか?

A.

一番費用がかからないのは、自分で特許出願をしてその状態でとりあえずそのまま保留することです。この場合の費用は14,000円です(特許出願書類を紙で提出する場合は電子化費用がさらに数千~一万数千円必要です)。特許出願をしておけばとりあえずは他人が同じ発明で特許権を取ることは防ぐことができます。そして、審査請求期限である3年間で発明品を売ってみて利益がでたならば、次の段階に進むということができます。なお、特許出願書類の内容に自信が無い場合、特許出願後10カ月くらいで利益を出せたら、特許事務所に特許出願の内容を整えてもらうということが考えられます。最初の特許出願から1年以内であれば優先権という制度を使うことで特許出願に新たな内容を加えることができますので、特許事務所で特許になるような出願書類に修正してもらうことができます。

また、特許出願で実費としてかかるのが審査請求費で15万円前後必要になりますが、これが無料になったり半額になったりする制度があります。特許庁のサイトで「減免」で検索してください。減免の対象になっていれば審査請求費および特許料を無料又は減額することができます。

さらに、公的な助成金や補助金が提供されている場合がありますので、検索サイトで「特許 補助金」「特許 助成金」などで検索してみるのもよいでしょう。

Q8.

 特許出願の願書には【発明者】と【特許出願人】の欄がありますが、どちらが特許権者になるのですか?

A.

特許出願人が特許権者になります。発明者は最初に特許を受ける権利を取得した人として願書に記載しますが、発明者の欄に記載されているだけでは何の権利もありません。

発明をした時点で発明者には特許を受ける権利が発生するので、特許を受ける権利を他人に移転しない限り発明者と特許出願人は一致します。もし、あなたが発明者で特許を受ける権利を移転した覚えが無いのに特許出願人が他の人の名前になっているならば騙されている可能性があります。なお、会社の就業規則で職務上の発明の特許を受ける権利が会社に帰属するように定めることは認められていますので、この場合は会社が特許出願人になることは合法です。

Q9.

 新しい料理を考えつきました。特許になりますか?

A.

料理や食品などでも特許の対象になります。発明・産業上利用性の判断基準を参照してください。判断基準に照らして当てはまらないのであれば発明に該当します。但し、料理の場合は材料の組合せですから、特許になるためには、進歩性を認めさせるような特別な組み合わせだったり、特異な効果が必要になるでしょう。なお、特許権は事業としての実施にのみおよびますから、家庭での料理にまで特許権の効力がおよぶことはありません。

Q10.

 ビジネスのやり方が特許になると聞いたことがありますが、本当ですか?

A.

原則としてビジネスのやり方は取り決めに過ぎず発明には該当しないので特許の対象にはなりません。しかしながら、ビジネスのやり方の過程の中に技術的な部分が含まれており、進歩性等の条件を満たすなら特許になります。例えば、インターネットを使ったビジネスのやり方であれば、情報のやり取りをコンピューターで処理するという技術的な部分が含まれますので、特許になり得ます。ビジネスのやり方を含む情報処理が特許になれば他社はそのビジネスのやり方を真似できなくなりますから、結果としてビジネスのやり方を特許で保護することが可能となります。

多くのビジネスモデル特許といわれるものは、ネットサービスを対象とするものです。もっとも、ビジネスの過程に技術的なものが含まれているならばインターネットを使っていなくても特許になり得ます。例えば、計量器、札、シールを技術的要素とするステーキの提供方法が特許になっています。興味のある方は「いきなりステーキ 特許」で検索してみてください。

また、以前本サイトで「ビジネスモデル特許について」というページを作っていました。少し古いですが、内容としては今でも十分通用するので参照してみてください。

Q11.

 ある商品を手作りで作って近所の人に配っているのですがこれが大変評判がいいのです。特許にしたいのですが可能でしょうか?

A.

特許権を取るには、発明品が従来にない新しい物であることが要求されます。新しいかどうかを判断する一つの基準は秘密を守る義務のない人が発明の内容を知っているかどうかどうかです。近所の人は秘密を守る義務を持った人ではありませんから、既に発明品は新しくないので特許権を取ることはできないということになります。

しかしながら、最初に近所の人に配ってから1年が経過していない場合は救済措置があります。特許法では新規性喪失の例外が定められていて、権利者の行為によって公開された発明は特許出願の際に所定の手続きをすることで新規性を失っていない扱いを受けることができます。

ところで、新規性喪失の例外の手続きをしないで、又は、配ってから1年以上経過してから特許出願をした場合はどうなるでしょう?現実問題として特許庁では近所で配った事実を知ることはできませんから、近所の人が情報提供などをしない限り、他の特許要件を満たせば特許になるでしょう。この場合、だれかが出願前に近所に配っていたことを探り当てた上で無効審判を請求すれば特許は無効になります。

Q12.

 広告に出した商品の売れ行きが予想以上だったので、この商品の特許権を獲得したいと思っています。大丈夫でしょうか?

A.

発明の内容が広告からわかってしまうような場合は、新規性が失われるので特許権を取ることができません。しかし、広告を出してから1年が経過していないならば、新規性喪失の例外規定の適用を受けることで新規性は失われなかったものとみなされます。したがって、この場合は特許権の取得は可能になります。広告を出してから1年以上経過しているときはQ12の商品を近所に配布した際と違って、第三者にかなり広く知られることになります。この場合は、特許権の取得は難しく、運よく特許権が取れても権利行使をすると無効審判請求によって無効にされる可能性が高いでしょう。

なお、広告からは、どのような構造や原理で発明が実現できるかをわからないような場合は新規性は失われていませんので、進歩性などの他の特許のための条件も満たすならば特許権を取得することができます。

Q13.

 開発した商品について、クラウドファンディングで資金を集めた後で特許出願したいと考えています。何か注意すべき点りますか?

A.

クラウドファンディングで公開した発明は新規性を失いますが、1年以内であれば新規性喪失の例外規定の適用を受けて新規性を失っていない扱いを受けることが可能なので、この制度を使って資金が集まれば特許出願をし、集まらなければその程度の発明とみなして特許出願をしないという方法は、一つの考え方でしょう。

しかし、新規性喪失の例外規定はリスクもあることに留意すべきです。例えば、クラウドファンディングを見た第三者が類似品を先に販売し始めたような場合、類似品には新規性喪失の例外規定は適用できませんので、これを理由に特許出願が拒絶されることがあり得ます。また、将来海外でも特許権を取りたいと考えている場合、日本と同様の新規性喪失の例外規定を特許法で設けていない国もありますので、一部の国でしか特許権は取れないことになります。

クラウドファンディングで公開した発明を特許出願する意思が最初からあるのであれば、公開前に特許出願をすることを検討してみてください。資金がないのであれば、自分で特許出願をしてみましょう。この場合、書類としては特許権が取れないようなものになるかもしれませんし、特許権が取れても権利範囲が狭いものになる可能性が高いでしょう。一方で、クラウドファンディングで公開する発明を余すところなく記載することはできるでしょうし、さらに、変形例や応用なども記載できるでしょう。少なくともクラウドファンディングで公開される内容よりも広く発明を記載することができるはずです。そして、クラウドファンディングで資金が得られた後で、特許事務所に特許出願内容を修正してもらいましょう。優先権という制度を使うことで特許出願から1年以内であれば新たな内容を追加してもらったより適切な特許出願とすることが可能です。また、クラウドファンディングで「特許出願中」と記載できるメリットもあります。

Q14.

 100万円近くかけて取得した特許権があります。しかし、特許発明を使った商品の売上があまりよくないので来年から販売を中止することにしました。もうすぐ特許権の更新時期なのですが更新を継続するべきでしょうか?

A.

まず、特許権取得のために使った100万円のことは忘れましょう。これは取り返すことのできない埋没費用です。そして、特許権が将来なんらかの利益を生み出す可能性があるかどうかのみを考えましょう。販売を中止する商品について将来改良品などを販売する可能性がどれくらいあるかとか、特許権があることで他社の参入障壁になっているかといったことを検討してみましょう。そして、期待される価値がこれから支払う特許料を超えるならば特許権を更新するのがよいでしょうし、そうでなければ更新は止めるのがよいでしょう。

Q15.

 友人と共同で発明をしたのですが、友人は特許出願をする気がありません。単独で特許出願をしても大丈夫でしょうか?

A.

共同で発明をした場合は、共同発明者全員で特許出願をしなければいけないのが原則です。但し、特許を受ける権利は譲渡することができますから、その友人から特許を受ける権利を譲渡してもらえば単独で特許出願をすることができます。譲渡は口頭の契約でも有効ですが、できれば文書にすることが望ましいですね。

Q16.

 海外でおもしろい発明品を見つけました。日本では全く新しい物です。これは日本で特許権を取ることができますか?

A.

特許法では新規性の無い発明は特許を受けることができませんが、新規性があるかどうかの判断の地理的な基準は日本国内ではなく世界全体です。ですから、海外で販売されている発明も新規性が無いので特許を受けることはできません。

ただし、その発明品が海外で特許出願をしていて出願日から1年を経過していないのであれば、優先権を譲り受けることで、優先権を主張して日本で特許出願をし、特許権を取ることは可能です。なお、ほとんどの国の出願は優先権が認められますが、認められない国も若干ありますので、これに該当しないことも必要です。

Q17.

 勤めている会社の社長に私の発明をうっかり話してしまいました。社長はこの発明を気に入って会社で特許出願をしました。しかし、私はこの発明で新たな会社を作ろうと思っていたので自分で特許出願をしようと考えていました。このような場合どうすればよいでしょうか?

A.

その発明が職務発明で、就業規則などに職務発明の特許を受ける権利が会社に移転することが記載されているような場合、社長の行為は正当なものとなります。職務発明とは会社の業務範囲に属し、発明をすることが発明者の現在又は過去の職務に属するような発明です。この場合、発明者にはなんらかの経済的な利益を会社から受ける権利を有することが法律上認められているので、この部分は会社に申し出るのが良いでしょう。

一方で、上記の場合に該当しない場合、会社の出願は冒認出願という正当性のない特許出願となります。対抗手段としては、特許出願中であれば、特許を受ける権利を有することの確認訴訟を、特許権成立後であれば、特許権移転請求訴訟を提起することができます。なお、職務発明に該当する場合は特許権が移転しても会社には特許発明を自由に使用できる通常実施権が認められることになります。

Q18.

 先日、ある発明について特許出願をしました。この発明はもう企業に売り込んでもいいですか?

A.

特許出願をすることで先願権を確保できますから、同じ発明を他人が特許出願しても拒絶されることになります。また、他人に話しても新規性を失うことはありません。ですから、特許出願後から企業に売り込んでも大丈夫です。

理想的には特許権を取得した後に売り込むことですが、そうすると費用もかかってしまいます。企業によっては、よい発明ならば特許出願中でもライセンス契約をしてもらえます。この場合、出願以降の手数料は企業側に負担してもらえることがほとんどですから出願費の負担だけで済みます。

Q19.

 国際特許をとりたいのですが、どうしたらいいでしょうか?

A.

マスコミでは国際特許という言葉をよく使いますが、一つの特許権で世界中のどこでも通用するようなものは存在しません。特許権は各国ごとに与えられるものですから、海外でも特許権が必要ならば各国ごとに特許出願をしなければなりません。なお、欧州特許のように一つの特許権で複数の国で通用する場合もあります。

また、国際特許出願(正しくは、特許協力条約に基づく国際出願)というものは存在します。これは、一つの出願で同時に複数国に出願したのと同じ効果が得られる特許出願です。つまり、出願段階では国際的なものがあるということになります。国際特許出願をしても特許権は各国ごとに審査を受けて各国ごとに成立します。

Q20.

 考えている発明について、まずは専門家のアドバイスをもらいたいのですが、どこで相談するのがいいでしょうか?

A.

無料で相談をすることができる場所がいくつかあります。主なものとして独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が全国に相談場所を設けています。INPITは特許庁の関係組織です。知財ポータルサイトの全国の窓口一覧からお近くの相談場所を探してみましょう。また、弁理士会でも全国にある支部で無料相談を行っています。弁理士会ウェブサイトの無料相談のご案内を参照してください。その他、特許事務所が独自で無料相談を行っている場合があります。「特許 無料相談」などで検索してみてください。

また、既に依頼してみたいと考えている特許事務所があるならば、有料であってもどのような事務所なのかを知るためにも一度相談をしてみるのは良い選択でしょう。


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